交通事故の被害に遭った場合、損害賠償額の算定には自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準という3つの基準があります。
どの基準を用いるかによって賠償額は大きく変わる可能性があります。
今回は人身事故で認められる損害賠償の種類と、3つの基準の違いについて解説します。
交通事故の人身被害における損害賠償は、民法第709条および第710条に基づいて請求できます。
損害賠償は大きく3つに分類されます。
1つめは積極損害です。
積極損害には治療費、通院交通費、入院雑費、付添看護費など実際に支出した費用が含まれます。
2つめは消極損害です。
消極損害には休業損害や逸失利益など、得られたはずの利益の喪失が含まれます。
3つめは精神的損害です。
精神的損害には入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。
これらの損害を総合的に算定し、被害者は加害者に対して賠償を請求できます。
損害の算定には複数の基準が存在し、基準によって金額が異なります。
自賠責基準は、自動車損害賠償保障法に基づく強制保険である自賠責保険の支払基準です。
被害者救済のための最低限の補償を目的としており、3つの基準の中で最も低額となります。
自賠責保険の支払限度額は傷害による損害が120万円、後遺障害による損害が後遺障害等級に応じて75万円から3,000万円、死亡による損害が3,000万円と定められています。
傷害による損害の算定では、休業損害は原則として1日6,100円、慰謝料は1日4,300円として計算されます。
慰謝料の日数は実治療日数×2または治療期間のいずれか少ない日数が用いられます。
たとえば治療期間が90日で実治療日数が35日の場合、実治療日数×2は70日となり、治療期間90日より少ないため70日が基準となります。
この場合の慰謝料は4,300円×70日で30万1,000円です。
自賠責基準は国が定めた最低限の補償であり、実際の損害額がこれを上回ることも少なくありません。
任意保険基準は、各保険会社が独自に設定している内部的な支払基準です。
自賠責保険でカバーしきれない損害を補償する民間保険であるため、自賠責基準よりは高額ですが、裁判所基準と比較すると低額に設定されていることが一般的です。
任意保険基準の具体的な金額は各保険会社によって異なり、一般には公開されていません。
保険会社との示談交渉では、通常この任意保険基準に基づいた賠償額が提示されます。
被害者が保険会社から提示された金額を受け入れるかどうかは自由ですが、提示額が適正かどうかを判断することは容易ではありません。
提示された金額に疑問がある場合には、弁護士に相談することが重要です。
弁護士であれば提示額が適正かどうかを判断し、必要に応じて増額交渉を行うことができます。
裁判所基準は、裁判実務で用いられている損害賠償額の算定基準であり、弁護士基準とも呼ばれます。
3つの基準の中で最も高額となり、被害者にとって適正な賠償額を得られる基準といえます。
裁判所基準は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準などに記載されており、裁判所が実際に採用する基準として広く認知されています。
入通院慰謝料は入通院期間に応じた基準額が設定されており、後遺障害慰謝料は等級ごとに基準額が定められています。
後遺障害第1級の場合は2,800万円、第2級は2,370万円というように等級に応じて逓減します。
たとえば自賠責基準では後遺障害第14級の慰謝料が32万円であるのに対し、裁判所基準では110万円となり、3倍以上の差が生じます。
裁判所基準での交渉や請求を行うには法的知識が必要となるため、弁護士に依頼することが一般的です。
弁護士が交渉することで、保険会社も裁判所基準を前提とした示談に応じる可能性が高まります。
3つの基準による賠償額の違いを理解することは重要です。
同じ被害内容であっても、どの基準を用いるかで受け取れる金額に大きな差が生じます。
自賠責基準は被害者救済のための最低限の補償であり、国土交通省によって基本的な対人賠償を確保することを目的としています。
任意保険基準は自賠責基準より高額ですが、保険会社の支払額を抑える傾向があります。
裁判所基準は民法第709条および第710条に基づく適正な損害額を算定する基準です。
一般的に金額は自賠責基準が最も低く、次いで任意保険基準、裁判所基準の順に高くなります。
被害者が適正な賠償を受けるためには、裁判所基準での請求を検討することが重要です。
ただし過失割合がある場合には、いずれの基準でも過失相殺が行われる点に注意が必要です。
交通事故における損害賠償には自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準という3つの基準があり、それぞれ金額が大きく異なります。
保険会社との示談交渉では任意保険基準での提示が一般的ですが、弁護士に依頼することで裁判所基準での交渉が可能となります。
多くの任意保険には弁護士費用特約が付帯されており、費用負担なく弁護士に依頼できる場合があります。
また損害賠償請求権には時効があり、人身事故の場合は損害および加害者を知った時から5年間です。
適正な賠償を受けるためには、交通事故に詳しい弁護士に早期に相談することが重要です。
お困りの際は北毛法律事務所へご相談ください。