離婚時の財産分与では、共有財産と特有財産の区別が重要です。
共有財産は分与対象となる一方、特有財産は原則対象外ですが、実務では例外的に共有と評価される場合もあり判断は複雑です。
また請求権には離婚時から5年の期間制限があります。
本記事では区別の基準や分与時のポイントを解説します。
共有財産とは、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産を指します。
具体的には、婚姻後に得た給与や賞与から貯めた預貯金、購入した不動産、自動車、家財道具などが該当します。
重要なのは、名義が夫婦のどちらか一方であっても、実質的に夫婦の協力によって築かれた財産であれば共有財産とみなされる点です。
夫名義の預金口座であっても、妻が家事や育児を担当することで夫が仕事に専念できた結果として形成された財産であれば、共有財産として分与の対象になります。
また、婚姻期間中に夫婦共同で経営していた事業の利益や、退職金の婚姻期間相当額なども共有財産に含まれる可能性があります。
特有財産は、共有財産とは異なる性質を持つ財産です。
民法762条1項では、夫婦の一方が婚姻前から有する財産および婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とされています。
特有財産とは、民法762条1項で定められた、夫婦の一方が単独で有する財産を指します。
具体的には、婚姻前から所有していた財産や、婚姻中であっても相続や贈与によって取得した財産が該当します。
結婚前に貯めていた預貯金、独身時代に購入した不動産、親から相続した土地や建物などです。
これらは原則として財産分与の対象外となります。
特有財産であっても、実務上は共有財産とみなされる可能性があります。
婚姻前の預貯金を婚姻後の生活費と混同して管理していた場合や、相続した不動産のローン返済に配偶者が貢献した場合などです。
配偶者の寄与の程度や財産の管理状況によって、実質的に共有財産としての性格を帯びると判断されることがあります。
相続で取得した不動産の価値が配偶者の管理や修繕によって維持または増加した場合、その貢献部分については財産分与の対象とされる可能性があります。
財産分与を適切に行うためには、分与の原則や財産評価の方法を理解することが大切です。
民法768条では、離婚した者の一方は相手方に対して財産の分与を請求できると定められています。
財産分与では、共有財産を2分の1ずつ分けるのが原則です。
これは、夫婦が協力して財産を形成したという考え方に基づきます。
ただし、一方が特別な才能や努力によって高額な収入を得ていた場合や、財産形成への寄与の程度に明らかな差がある場合は、割合が修正されることもあります。
裁判所は、婚姻期間の長さ、それぞれの収入や資産形成への貢献度、離婚後の生活状況などを総合的に勘案して、適切な分与割合を決定します。
財産分与では、財産を評価する時期が重要です。
一般的には別居時または離婚時の財産状況を基準とします。
不動産は時価、預貯金は残高、退職金は婚姻期間相当額を算出します。
財産を正確に把握するためには、通帳や不動産登記簿、保険証券などの資料が必要です。
相手方が財産を隠している可能性がある場合は、弁護士に相談して適切な調査を行うことが有効です。
財産分与を請求する際には、知っておくべき重要な注意点があります。
特に除斥期間については、権利行使に直接影響するため、十分な理解が必要です。
財産分与請求権には除斥期間があり、2026年4月の民法改正により、従来の2年から5年に延長されました。
この期間は離婚が成立した時から起算されます。
除斥期間を過ぎると、権利自体が消滅し、請求できなくなります。
離婚後に財産分与の話し合いが進まない場合でも、期間内に家庭裁判所に調停を申し立てるなど、権利を保全する行動が必要です。
財産分与では、財産の範囲や評価方法、寄与の程度など、法的判断が必要な事項が多くあります。
相手方が財産を隠したり、不当に低い金額を主張したりするケースもあります。
適正な分与を受けるためには、証拠の収集や法的な主張の組み立てが重要です。
弁護士に相談することで、財産調査の方法や交渉の進め方について助言を得られ、権利を守ることができます。
共有財産と特有財産の区別は財産分与の基本ですが、実務では判断が複雑になるケースも少なくありません。
特有財産であっても、配偶者の寄与が認められれば共有財産と評価される可能性があり、個別事情に応じた検討が必要です。
財産分与請求権には離婚時から5年の期間制限があるため、早めに適切な対応を行うことが重要です。
財産の範囲や評価方法、財産隠しへの対応など専門的な判断が求められる場面も多いため、不安がある場合は弁護士に相談しながら進めることが望ましいでしょう。
離婚調停は、夫婦間で離婚条件がまとまらない場合に家庭裁判所の調停委員を介して解決を図る手続きです。
非公開で合意形成を目指しますが、進め方によっては不利な結果となることもあります。
本記事では離婚調停の基本的な流れと注意点を整理し、適切な対応のポイントを解説します。
離婚調停は、申立てから期日での話し合いを経て、合意または不成立に至るまで一定の手順で進みます。
手続きの全体像を把握しておくことで、各段階で適切な対応が取りやすくなります。
また、事前に流れを理解しておくことで、不要な不安を軽減し、落ち着いて手続きに臨むことが可能になります。
離婚調停は、家庭裁判所に調停申立書と必要書類を提出することで開始されます。
申立てには収入印紙1200円と郵便切手代が必要です。
申立書には離婚理由や親権、財産分与、養育費などの希望条件を記載します。
この段階での記載内容は、その後の調停の方向性に影響を与えるため、事実関係と希望条件を整理したうえで作成することが重要です。
申立て後、家庭裁判所から調停期日が指定されます。
調停は裁判官1名と調停委員2名で構成され、当事者が交互に意見を述べる形式で進行します。
直接対面せずに進むため、感情的な対立が激しい場合でも冷静な話し合いが可能です。
近年はウェブ会議による調停が行われるケースもあり、柔軟な参加方法が整備されています。
双方が条件に合意すれば調停成立となり、調停調書が作成されます。
調停調書は確定判決と同一の効力を持ち、強制執行も可能です。
一方で合意に至らない場合は調停不成立となり、離婚訴訟へ移行することになります。
そのため、調停段階でどこまで主張し、どこで折り合いをつけるかの判断が重要となります。
離婚調停では、申立て段階から適切な証拠を準備することが重要です。
財産分与を求める場合は預金通帳や不動産の登記事項証明書、養育費の請求では源泉徴収票や給与明細などが必要となります。
証拠のない主張は調停委員の心証を得られず、希望条件での合意が難しくなる可能性があります。
また、申立書は感情的な表現を避け、客観的事実に基づいて記載することが求められます。 特に「一方的に悪い」といった評価ではなく、具体的な事実や数値を示すことが重要です。
調停期日は原則として平日に行われます。
出席は義務ではありませんが、無断欠席は調停の進行を妨げ、調停委員の心証を悪化させるため避けるべきです。
やむを得ず出席できない場合は、事前に裁判所へ連絡し日程調整を行います。
調停では冷静に主張を行い、相手方の意見に対しても根拠を示して対応することが重要です。
また、発言内容の一貫性や態度も評価対象となるため、誠実な対応を心がける必要があります。
調停では、調停委員から解決案が提示されることがあります。
ただし、その内容が必ずしも自分にとって最適とは限りません。
不利益な条件や納得できない内容については安易に同意せず、理由を明確にしたうえで慎重に判断する必要があります。
調停調書は強い法的効力を持つため、一度合意すると原則として撤回できません。
そのため、条件の内容だけでなく、将来的な生活への影響も踏まえて判断することが重要です。
調停で合意に至らない場合は、離婚訴訟を提起するか、調停を取り下げるかを選択します。
離婚訴訟では調停での主張や証拠が重要となるため、事前の準備が結果に大きく影響します。
また、2026年4月には法定養育費の制度が開始され、取り決めをしなくても最低限の養育費を請求できる仕組みが整備されました。
こうした最新の制度動向や共同親権の導入なども踏まえ、調停段階から将来を見据えた判断を行うことが求められます。
離婚調停は、夫婦間の離婚条件を話し合いで解決する有効な手続きですが、証拠の準備不足や期日への欠席、調停委員の提案への安易な同意は不利な結果を招く可能性があります。 調停を有利に進めるためには、客観的な証拠を揃え、期日には誠実に出席し、納得できない条件には明確な理由を示して対応することが重要です。
調停での合意内容は法的拘束力を持つため、合意前に十分に内容を確認し、不明点があれば弁護士などの専門家に相談することが望ましいでしょう。
今後は制度改正の動きにも注意しながら、適切に手続きを進めることが重要です。
成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度があり、それぞれ費用の仕組みが異なります。
申立時の初期費用だけでなく、後見人や後見監督人への報酬など継続的にかかる費用も把握しておく必要があります。
本記事では、制度ごとの費用体系を具体的に解説します。
法定後見制度を利用する際は、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てる必要があります。
申立時にかかる費用が初期費用となります。
収入印紙代として800円、連絡用の郵便切手代として数千円程度が必要です。
収入印紙代や切手代は、裁判所での手続きを進めるための基本的な費用となります。
申立の際には、さまざまな書類を提出する必要があります。
戸籍謄本や住民票、登記されていないことの証明書などの書類取得費用が実費として発生します。
書類は複数必要となるため、合計で数千円程度を見込んでおく必要があります。
書類の種類や取得する役所によって費用は異なりますが、準備段階でまとまった実費がかかる点を理解しておくことが大切です。
本人の判断能力を医学的に判定するため、医師による鑑定が必要と判断される場合があります。
鑑定費用は事案により異なりますが、5万円から10万円程度が一般的です。
ただし、すべてのケースで鑑定が必要になるわけではなく、診断書のみで審理が進む場合もあります。
初期費用は申立人が負担するのが原則ですが、後に本人の財産から支出される場合もあります。
法定後見制度では、初期費用のほかに後見人への報酬が継続的に発生します。
法定後見人の報酬は、家庭裁判所が審判で決定します。
報酬額は本人の財産額や後見事務の内容によって異なり、個別の事情に応じて裁判所が適正な金額を判断します。
後見人報酬の目安は、一般的に月額2万円から6万円程度とされています。
財産額が1000万円以下の場合は月額2万円程度、1000万円を超え5000万円以下の場合は月額3万円から4万円程度、5000万円を超える場合は月額5万円から6万円程度となる傾向があります。
あくまで目安であり、実際の報酬額は裁判所が個別に判断します。
後見事務が特に複雑な場合や特別な業務が必要な場合は、基本報酬に加算されることもあります。
親族が後見人等に選ばれ、後見監督人が選任された場合は、別途監督人報酬が発生します。
後見監督人は後見人の事務を監督する役割を担う人で、必要に応じて家庭裁判所が選任します。
監督人報酬も裁判所の審判で決定され、後見人報酬の半額程度が目安とされています。
後見監督人報酬は本人の財産から支払われ、後見が終了するまで継続的に発生します。
任意後見制度は、本人の判断能力が十分なうちに将来に備えて契約を結ぶ制度です。
任意後見契約は公正証書で作成することが任意後見契約に関する法律で義務付けられています。
公証役場での公正証書作成には、1契約につき1万3000円の手数料が必要です。
また、公正証書を紙に出力する場合には、法務省令で定める計算方法により3枚を超える部分について、1枚ごとに300円が加算されます。
法定後見制度とは異なり、契約の段階で費用が発生する点が特徴です。
公正証書の基本手数料に加えて、登記嘱託手数料1600円、法務局に納める収入印紙代2600円が必要です。
さらに、登記申請のために公正証書謄本を郵送する書留郵便料も実費で発生します。
また、公正証書の正本や謄本などを取得する場合には、電磁的記録で発行する場合は1通あたり2500円、書面で発行する場合は枚数に応じて1枚あたり300円の手数料がかかります。 これらの費用を合計すると、公正証書作成にかかる最低限の費用はおおむね1万7000円程度となります。
なお、本人が病床にあるなどの事情で公証人が出張する場合には、病床執務加算として6500円が加算され、基本手数料は1万9500円となるほか、日当や交通費も別途必要となります。
任意後見契約の内容を専門家に相談しながら作成する場合、弁護士や司法書士への相談料や契約書案作成費用が別途発生する可能性があります。
契約内容は将来の財産管理や身上監護の範囲を定める重要なものであるため、専門家のサポートを受けることが推奨されます。
相談料や作成費用は依頼先によって異なり、契約内容や相談回数に応じて費用が変動します。
任意後見制度における報酬の仕組みは、法定後見制度とは大きく異なります。
任意後見人の報酬は、任意後見契約書の中であらかじめ取り決めます。
法定後見制度のように裁判所が決定するのではなく、契約当事者間の合意によって金額が定められる点が特徴です。
月額報酬として設定するのが一般的で、金額は後見事務の内容や本人と後見人の関係性により異なります。
契約時に具体的な金額を明記しておくことで、将来の費用負担を明確にできます。
親族が後見人となる場合は無報酬とする契約も可能ですし、専門家が後見人となる場合は相応の報酬を設定することもできます。
契約の自由度が高い分、将来を見据えた慎重な検討が必要です。
任意後見が開始されると、家庭裁判所は必ず任意後見監督人を選任します。
任意後見監督人の選任は、任意後見契約に関する法律で定められた仕組みです。
監督人の報酬は裁判所が決定し、月額1万円から3万円程度が目安とされています。
任意後見制度では監督人の選任が必須であるため、後見人報酬に加えて監督人報酬も継続的に発生する点を考慮する必要があります。
成年後見制度の費用は、法定後見と任意後見で仕組みが異なります。
法定後見では申立時の初期費用に加え、裁判所が決定する後見人報酬が継続的に発生します。
任意後見では公正証書作成費用が初期費用となり、契約で定めた後見人報酬と裁判所が決定する監督人報酬が必要です。
いずれの制度も、初期費用だけでなく長期間にわたる報酬負担を考慮する必要があります。
報酬は本人の財産から支払われるため、財産状況に応じた適切な制度選択が重要となります。
費用面での不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故の被害に遭った場合、損害賠償額の算定には自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準という3つの基準があります。
どの基準を用いるかによって賠償額は大きく変わる可能性があります。
今回は人身事故で認められる損害賠償の種類と、3つの基準の違いについて解説します。
交通事故の人身被害における損害賠償は、民法第709条および第710条に基づいて請求できます。
損害賠償は大きく3つに分類されます。
1つめは積極損害です。
積極損害には治療費、通院交通費、入院雑費、付添看護費など実際に支出した費用が含まれます。
2つめは消極損害です。
消極損害には休業損害や逸失利益など、得られたはずの利益の喪失が含まれます。
3つめは精神的損害です。
精神的損害には入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。
これらの損害を総合的に算定し、被害者は加害者に対して賠償を請求できます。
損害の算定には複数の基準が存在し、基準によって金額が異なります。
自賠責基準は、自動車損害賠償保障法に基づく強制保険である自賠責保険の支払基準です。
被害者救済のための最低限の補償を目的としており、3つの基準の中で最も低額となります。
自賠責保険の支払限度額は傷害による損害が120万円、後遺障害による損害が後遺障害等級に応じて75万円から3,000万円、死亡による損害が3,000万円と定められています。
傷害による損害の算定では、休業損害は原則として1日6,100円、慰謝料は1日4,300円として計算されます。
慰謝料の日数は実治療日数×2または治療期間のいずれか少ない日数が用いられます。
たとえば治療期間が90日で実治療日数が35日の場合、実治療日数×2は70日となり、治療期間90日より少ないため70日が基準となります。
この場合の慰謝料は4,300円×70日で30万1,000円です。
自賠責基準は国が定めた最低限の補償であり、実際の損害額がこれを上回ることも少なくありません。
任意保険基準は、各保険会社が独自に設定している内部的な支払基準です。
自賠責保険でカバーしきれない損害を補償する民間保険であるため、自賠責基準よりは高額ですが、裁判所基準と比較すると低額に設定されていることが一般的です。
任意保険基準の具体的な金額は各保険会社によって異なり、一般には公開されていません。
保険会社との示談交渉では、通常この任意保険基準に基づいた賠償額が提示されます。
被害者が保険会社から提示された金額を受け入れるかどうかは自由ですが、提示額が適正かどうかを判断することは容易ではありません。
提示された金額に疑問がある場合には、弁護士に相談することが重要です。
弁護士であれば提示額が適正かどうかを判断し、必要に応じて増額交渉を行うことができます。
裁判所基準は、裁判実務で用いられている損害賠償額の算定基準であり、弁護士基準とも呼ばれます。
3つの基準の中で最も高額となり、被害者にとって適正な賠償額を得られる基準といえます。
裁判所基準は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準などに記載されており、裁判所が実際に採用する基準として広く認知されています。
入通院慰謝料は入通院期間に応じた基準額が設定されており、後遺障害慰謝料は等級ごとに基準額が定められています。
後遺障害第1級の場合は2,800万円、第2級は2,370万円というように等級に応じて逓減します。
たとえば自賠責基準では後遺障害第14級の慰謝料が32万円であるのに対し、裁判所基準では110万円となり、3倍以上の差が生じます。
裁判所基準での交渉や請求を行うには法的知識が必要となるため、弁護士に依頼することが一般的です。
弁護士が交渉することで、保険会社も裁判所基準を前提とした示談に応じる可能性が高まります。
3つの基準による賠償額の違いを理解することは重要です。
同じ被害内容であっても、どの基準を用いるかで受け取れる金額に大きな差が生じます。
自賠責基準は被害者救済のための最低限の補償であり、国土交通省によって基本的な対人賠償を確保することを目的としています。
任意保険基準は自賠責基準より高額ですが、保険会社の支払額を抑える傾向があります。
裁判所基準は民法第709条および第710条に基づく適正な損害額を算定する基準です。
一般的に金額は自賠責基準が最も低く、次いで任意保険基準、裁判所基準の順に高くなります。
被害者が適正な賠償を受けるためには、裁判所基準での請求を検討することが重要です。
ただし過失割合がある場合には、いずれの基準でも過失相殺が行われる点に注意が必要です。
交通事故における損害賠償には自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準という3つの基準があり、それぞれ金額が大きく異なります。
保険会社との示談交渉では任意保険基準での提示が一般的ですが、弁護士に依頼することで裁判所基準での交渉が可能となります。
多くの任意保険には弁護士費用特約が付帯されており、費用負担なく弁護士に依頼できる場合があります。
また損害賠償請求権には時効があり、人身事故の場合は損害および加害者を知った時から5年間です。
適正な賠償を受けるためには、交通事故に詳しい弁護士に早期に相談することが重要です。
お困りの際は北毛法律事務所へご相談ください。
交通事故で後遺症が残った場合、後遺障害等級の認定結果が損害賠償額を大きく左右します。
しかし、認定結果に納得できないケースもあります。
今回は、後遺障害等級認定に不満がある場合の対処法について解説します。
交通事故による後遺障害とは、治療を続けても完治せず身体に残った機能障害や神経症状のことをいいます。
医師がこれ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと判断した状態を症状固定といい、この時点で残っている症状が後遺障害として評価されます。
後遺障害等級認定制度では、障害の程度に応じて等級が定められており、介護を要する後遺障害は別表第一の第1級・第2級、その他の後遺障害は別表第二の第1級から第14級に分類されます。
等級の数字が小さいほど障害の程度が重く、受け取れる賠償額も大きくなります。
認定機関は損害保険料率算出機構であり、提出された医療記録や診断書などをもとに等級を判定します。
後遺障害等級が認められない・低い場合のデメリットは以下のとおりです。
後遺障害等級が認定されないと、後遺障害慰謝料を受け取ることができなくなります。
また、障害の程度が軽い等級に認定された場合には、本来受け取れるはずの金額より少ない慰謝料しか受け取れないことになります。
後遺障害慰謝料の金額は、自賠責保険基準と裁判所基準で大きく異なります。
第14級の場合、自賠責保険基準では32万円ですが、裁判所基準では110万円となり約3.4倍の差があります。
第12級では自賠責保険基準が93万円に対し、裁判所基準は290万円と約3.1倍です。
さらに障害の程度が重い等級になるほど金額差は拡大し、適正な等級認定を受けることの重要性が高まります。
逸失利益とは、後遺障害により失われた将来の収入のことです。
後遺障害等級に応じて労働能力喪失率が定められており、この割合をもとに逸失利益が計算されます。
等級が認定されなければ逸失利益も認められず、障害の程度が軽い等級だと労働能力喪失率も低く算定されます。
その結果、本来受け取れるはずの賠償額との差が数百万円から数千万円になる可能性があります。
後遺障害等級認定に不満がある場合の対処法は、次のとおりです。
異議申し立てとは、認定結果に不服がある場合に再審査を求める手続きです。
提出先は損害保険料率算出機構となり、回数制限がないため何度でも申し立てることができます。
異議申し立てには、異議申立書のほか新たな医師の意見書や診断書、画像所見、症状を裏付ける客観的資料などを提出します。
初回の認定で提出した資料と同じものを再度提出しても、結果が変わる可能性は低いといえます。
そのため、新たな医学的証拠を追加して提出することが重要です。
医師に改めて診察を受け、症状の詳細や事故との因果関係について意見書を作成してもらうことが効果的です。
自賠責保険・共済紛争処理機構とは、弁護士、医師、学識経験者で構成される第三者機関です。
異議申し立てより慎重な審査が行われ、専門家による多角的な検討が期待できます。
この手続きは無料で利用できる点が大きなメリットです。
異議申し立てが損害保険料率算出機構内部での再審査であるのに対し、紛争処理機構は外部の独立した機関による審査である点が異なります。
そのため、異議申し立てで結果が変わらなかった場合でも、紛争処理機構への申請により認定が変わる可能性があります。
異議申し立てを成功させるには、医学的証拠を充実させることが最も重要です。
MRIやCTなどの画像所見により、症状の原因となる異常所見を明らかにすることが求められます。
また、医師の意見書では症状と事故の因果関係を詳細に記載してもらう必要があります。
神経学的検査結果など他覚的所見を示す資料も有効です。
継続的な通院記録は、症状の一貫性を証明する重要な証拠となります。
さらに、事故態様と症状の整合性が取れていることも審査で重視されます。
日常生活や仕事への具体的な支障を示すことで、後遺障害による影響を明確に伝えることができます。
弁護士に相談することで、医学的知見に基づく異議申立書の作成サポートを受けられます。
適切な医療機関の紹介や医師との連携により、必要な医学的証拠を収集することができます。
自賠責保険・共済紛争処理機構への申請や訴訟の代理も弁護士に任せることができます。
裁判所基準での賠償額算定により、大幅な増額が期待できる点も大きなメリットです。
保険会社との交渉を任せられるため、精神的な負担も軽減されます。
後遺障害等級認定は、損害賠償額に大きく影響する重要な手続きです。
認定結果に不満がある場合には、異議申し立てや紛争処理機構への申請、訴訟などの手続があります。
適切な医学的証拠を収集することと時効に注意することが重要です。
これらの手続きは複雑で専門知識が必要なため、弁護士に相談することをおすすめします。
北毛法律事務所では交通事故案件の経験豊富な弁護士が対応いたします。
後遺障害等級認定でお困りの方は、まずはお気軽にご相談ください。
相続により故人の財産を引き継ぎます。その対象となる財産は故人が所有していた資産や負債、権利義務を広く含み、借金などのマイナスの財産も含まれることに注意が必要です。また、一部相続の対象とならないものもありますので当記事でご確認ください。
相続の対象となる財産は、故人(被相続人)が所有していたすべての資産、負債、権利義務です。これには金融資産、不動産、動産、そして負債なども含まれています。
《 相続の対象になるものの例 》
金融資産の中でも現金や預貯金は比較的手続きが簡単ですが、株式などの有価証券は名義変更の手続きに多少の手間が発生します。不動産だと名義変更に相続登記が必要で、しかもこの相続登記は近年法改正により相続人の義務となっています。相続について認識した日から3年以内という期限内に申請を済ませなくてはなりません。
動産や知的財産権、その他の資産も相続の対象となりますが、これらの財産については評価が難しいケースがあります。特に美術品や骨董品などは専門家による鑑定が必要になるでしょう。
相続では、原則として負債も引き継ぎます。亡くなった方が借金をしていた、ローンが残っている可能性もあるため注意してください。そのまま相続してしまうと返済を肩代わりすることになります。
相続放棄によってこの負担を回避することもできますが、それ以上にプラスの財産があるのなら返済資金をそこから捻出できるため、プラスとマイナスのバランスを考えることも大事です。
「借金をしている可能性が否定できないが、手がかりがない」と不安を拭えないときは、信用情報機関に対して開示請求をしてみましょう。以下3つの信用情報機関にて、自らが相続人であることを証明できる資料とともに、故人の信用情報について開示するよう請求します。
この請求により、ある程度故人の借り入れ状況を把握することができるでしょう。
※請求する機関によって手続き方法や必要書類は異なる。また、1,000円前後の手数料も発生する。
一部の財産や権利は相続の対象外となります。これらは主に「祭祀財産」と「一身専属権」に分類されます。
祭祀財産とは「祖先を祀るための財産」を指します。民法第897条に基づき相続財産とは別枠で扱われ、慣習に従って承継者が取得することになります。
(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
なお、祭祀財産とは以下の表に該当するものをいいます。
祭祀財産の種類 | 具体例 |
|---|---|
系譜 | 家系図、先祖からの血縁関係を記録した文書。 |
祭具 | 位牌、仏壇、仏像、神棚、神具、仏具など、祭祀や礼拝に使う器具・道具。 |
墳墓 | 墓碑(墓石)や墓地、棺など遺体や遺骨を葬る設備。 |
また、香典に関しても相続財産には該当せず、祭祀主催者や遺族に対する贈与財産と考えられています。
一身専属権とは、「被相続人個人の人格や身分と密接に関わっているため、他人に譲り渡したり行使したりすることが不可能または不適当な権利義務」のことです。たとえば以下の権利等が該当します。
これらの権利義務は被相続人の個人的な状況や能力に基づいて与えられたものであるため相続の対象とはならず、被相続人の死亡とともに消滅します。また、相続の仕組みによらず譲渡・贈与することもできません。
相続財産には含まれないものの、相続税の計算上ではこれと同等に扱うことが定められている「みなし相続財産」と呼ばれるものもあります。
そのほかの財産と合わせて価額が3,000万円(厳密には相続税における基礎控除額)超に上るときは相続税の申告および納付が必要になる可能性が出てくるため要注意です。
その代表例が①生命保険金と②死亡退職金です。
これらは契約に基づいて特定の人物が取得する金銭であって、相続人だから取得するものではありません。そのため遺産分割の対象からも外れるのですが、相続税が課税されることはあります。
いずれも[500万円×法定相続人の数]までの金額は非課税となりますので全額に課税を受けるわけではありませんが、実際に受取人となった際はその金銭がみなし相続財産であることに留意してください。
基本的にはすべての財産が相続の対象になるため、調査をするまでもなく相続人が取得できます。
しかしさまざまな観点から、詳しく調査をしておくべきといえます。
1つに「相続税の申告の必要性を判断するため」という点を挙げられますが、もう1点、「思わぬ負債が見つかったときには相続放棄も検討するため」という点も挙げられます。自らが相続人になったことを認識してから3ヶ月以内に家庭裁判所で放棄の手続きを進めないと相続を受け入れた(単純承認)とみなされてしまいます。
また、相続人が複数いるときは調査を経て相続財産の内容や価額をはっきりさせないと遺産分割協議が進められません。
このようにさまざまな理由があることから、財産調査は実質的に必須の作業と捉えておくべきです。専門家の力を借りればスムーズに調査も進みますので弁護士や税理士も活用もご検討ください。
遺言は、遺産の分け方を指定するための重要な手段です。
特に「公正証書遺言」は、公証人が関与して作成されるため、法的に強い形式とされています。
今回は、公正証書遺言を作成する具体的な流れをわかりやすく解説します。
公正証書とは、公証人という法律の専門家が、個人・法人の依頼を受けて作成する公的な文書です。
公証人が内容を確認し、正確に作成したという裏付けがあるため、法的に強い証拠力が認められています。
たとえば、契約書などが公正証書として作成された場合、「その文書が本物であるかどうか」という点で争われにくくなります。
公正証書には、以下の3種類があります。
公正証書遺言は、②の「単独行為に関する公正証書」に該当します。
公正証書遺言は、公証人役場で公証人が作成する遺言です。
遺言者が内容を口述し、公証人が文書にまとめたうえで、証人2人の立ち会いのもと作成されます。
特徴は以下の通りです。
さまざまなリスクを避けつつ、遺言を確実に残したい場合によく選ばれます。
公正証書遺言作成の流れは、以下の通りです。
それぞれ詳しく解説します。
まずは、どのような内容の遺言にするかを検討します。
財産の分け方、相続人の範囲、特定のひとへの遺贈、付言事項などを整理すると、公証人との打ち合わせがスムーズになります。
あらかじめ弁護士や司法書士などの専門家に相談し、内容が法的に問題ないか確認しておくのもおすすめです。
公正証書による遺言を作成するには、本人確認書類に加えて、相続関係や財産の内容を証明する資料の提出が必要です。
遺言の内容を正確に反映させるためにも、必要な書類を漏れなく準備してください。
まずは遺言者本人の確認資料として、以下のいずれかを用意します。
【遺言者本人の確認資料】
その他、遺言公正証書を作成する際は、以下の書類が必要です。
【相続人や受遺者に関する資料】
【財産に関する資料】
【証人に関する資料】
【遺言執行者に関する資料】
状況によって必要な資料が変わるため、事前によく確認するのが重要です。
公正証書遺言の作成には、2人以上の証人の立ち会いが必要です。
証人には以下のような制限があります。
証人は自分で手配するか、公証役場に依頼して用意してもらうかのどちらかの方法があります(後者の場合は別途費用がかかります)。
準備が整ったら、公証役場に連絡して遺言作成の予約を取ります。
遺言の草案をもとに、公証人と事前に打ち合わせを行い、内容を確認・調整します。
公証人からは、法的に不備がないか、実現可能な内容かどうかなどのアドバイスも受けられます。
予約した日時に公証役場へ出向き、公証人の前で内容を口述します。
公証人が文書を読み上げ、内容に誤りがなければ、遺言者と証人が署名押印して作成完了です。
なお、病気や高齢などで公証役場に行けない場合は、自宅や病院などへの出張にも対応してもらえます(出張費が必要)。
作成した公正証書遺言の原本は、公証役場で保管されます。
遺言者や代理人は、正本・謄本を受け取れます。
なお公正証書遺言は、家庭裁判所での検認が不要です。
たとえば自筆証書遺言の場合、その内容を実現する前に、検認という別の手続きを家庭裁判所で進める必要があります。
しかし公正証書遺言の場合は、遺言の存在さえ確認できれば、そのまま相続手続きに使えます。
公正証書遺言は、トラブル防止や相続手続きの簡略化に役立ちます。
大切な財産を円滑に引き継ぐために、早めに準備するのが理想的です。
作成に不安がある場合は、弁護士などの専門家に相談しながら進めるのがおすすめです。
交通事故に遭った後、治療を続けていても、ある時点で「これ以上はよくならない」と医師が判断する場合があります。
このような状態を「症状固定」と呼びますが、一般の方にはなじみのない言葉かもしれません。
今回は、交通事故における症状固定の意味やタイミング、影響を解説します。
交通事故の被害者がケガをして治療を受け、一定期間が過ぎると医師が「今後は大きな回復は見込めない」と判断する場合があります。
この判断が下された時点が「症状固定」です。
症状固定は、「治療の終了」とは意味が異なります。
完治はしていなくても、これ以上治療を続けても回復が見込めないとされる状態が症状固定です。
症状が残っている場合でも、「後遺症」として扱われる転換点となります。
症状固定の判断をするのは、治療を担当している医師です。
医学的な根拠にもとづいて、「これ以上の改善は見込めない」と判断されれば、症状固定となります。
医師の判断だけでなく、被害者本人の感じ方や生活への影響が重視されるケースもあります。
もし保険会社が一方的に症状固定を主張してきた場合でも、それに従う必要はありません。
医師の意見や、場合によっては複数の医師のセカンドオピニオンを求めるのも重要です。
症状固定の時期はそれぞれ異なりますが、事故からおおよそ6か月から1年が目安です。
ただし傷の程度や回復のスピードによって、症状固定のタイミングは異なります。
打撲は、交通事故のけがの中でも比較的軽いものとされます。
軽度のものであれば、数日から数週間で自然に回復するケースがほとんどです。
しかし部位や程度によっては、痛みが長く続いたり、神経を圧迫してしびれが残ることもあります。
その場合は、経過をみながら、1か月から3か月程度の治療を行います。
完治し、病状固定に至らない場合も珍しくありません。
むち打ちの場合は、症状が表に出にくく、客観的に証明するのが難しいのが特徴です。
6か月から1年ほどで症状固定とされるのが一般的です。
骨折の場合は、骨が癒合するまでの期間や、その後のリハビリの進み具合によって異なります。
通常、3か月から半年程度で骨がつくとされ、その後の経過をみて6か月から1年ほどで症状固定と判断されるケースが一般的です。
醜状障害とは、顔や体に目立つ傷などが残ることです。
やけどや切り傷、手術痕などが原因で、見た目に明らかな変化がある場合が該当します。
症状固定の目安としては、6か月から1年程度です。
高次脳機能障害とは、事故などによって脳に損傷を受けた結果、記憶力・集中力・判断力などに問題が生じる障害です。
外見上は異常がなくても、言葉が上手く出ない、感情のコントロールが難しいなどの症状がみられます。
症状固定の時期は、慎重に見極める必要があり、一般的に1年以上の観察・リハビリを経て判断されます。
症状固定と診断されると、残った症状は、後遺障害として扱われます。
保険会社に対しては、後遺障害等級の認定の申請が可能です。
申請によって、後遺障害慰謝料や逸失利益といった補償を受け取るかどうかが決まります。
後遺障害慰謝料とは、交通事故によって被害者に残ってしまった後遺症(後遺障害)に対して支払われるものです。慰謝料は、後遺障害の等級によって金額が大きく異なります。
自賠責保険の基準に基づいて1級から14級まで定められており、1級が最も重く、14級が最も軽度な後遺障害とされます。
逸失利益とは、交通事故による後遺障害のために、将来にわたって得られなくなった収入(利益)に対する補償です。
具体的には、後遺障害がなければ将来得られたであろう収入から、後遺障害によって減少した収入分を差し引いた金額を指します。
保険会社が示談を急ぐ理由は、治療費の支払いを早く終わらせたいという思惑です。
そのため、まだ治療の効果がある段階で症状固定を勧められることもあります。
しかし早く症状固定と診断されると、本来得られるはずの補償が少なくなるリスクがあります。
無理に示談せず、必要であれば弁護士や医師に相談しながら慎重に判断すべきです。
交通事故によって後遺障害等級の認定を受けた後、症状固定とされたにもかかわらず、しばらくしてから症状が悪化するケースがあります。
交通事故との関連が疑われる場合は、医師の再診を受けるのが大切です。
症状の変化が事故によるものなのか、それとも別の要因によるものなのかは重要なポイントです。
たとえば、持病の悪化や症状固定後の新たなケガが原因とされれば、交通事故との因果関係が認められない可能性もあります。
症状固定を判断する前に、経過観察の期間を十分に取る必要があります。
症状固定が一度下された後に治療を再開した場合、保険会社がその後の治療費を支払うことはまれです。
「症状固定後に治療を再開するということは、当初の判断が間違っていたことになる」として、支払いを拒否されるケースが多く見られます。
症状固定後に状態が悪化した場合は、医学的な根拠をそろえ、事故との因果関係を明確にするのが重要です。
今回は、交通事故における症状固定について解説しました。
安易に保険会社の指示に従うと、本来受け取れる補償を逃す可能性もあります。
症状固定の判断が近づき、本格的に示談交渉を進める段階になったら、弁護士などの専門家への相談を検討してください。
離婚の際には、夫婦が築いてきた財産をどのように分けるかが大きな争点となります。
婚姻中に協力して形成した財産を公平に分配する仕組みを「財産分与」と呼びます。
ただし、すべての財産が分与の対象になるわけではありません。
今回は、財産分与の対象となる財産とならない財産について具体例を挙げながら解説します。
財産分与とは、離婚した夫婦の一方が他方に対して、婚姻中に築いた財産を分けることを求める制度です。
夫婦が協力して形成した財産を公平に分配することを目的としています。
日本の民法では、第768条で財産分与について定めています。
離婚に伴う財産分与において、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産(共有財産)は、原則として2分の1ずつ分けるのが基本的なルールです。
婚姻生活では、夫婦の一方が外で働いて収入を得ていても、他方が家庭を守り、子育てや家事を担うことで支え合っています。
「収入を得る行為」も「家庭を支える行為」も、いずれも財産形成に貢献していると評価されるため、両者の貢献度は原則として同等とみなされます。
一方が専業主婦(夫)であったり、一方の不倫が原因で離婚になったとしても、基本的には2分の1の割合が維持されるのが一般的です。
財産分与の対象になるのは、婚姻生活で夫婦が協力して築いた財産(共有財産)です。
代表的な財産は、以下のとおりです。
それぞれ確認していきましょう。
夫婦の生活費や貯蓄として積み立てられた普通預金・定期預金は、分与の対象になる財産です。
名義が夫でも妻でも関係なく、婚姻中に形成された部分は共有財産とみなされます。
共通口座や生活費用口座も対象になることがほとんどです。
夫婦で購入したマイホームや土地は高額な資産であり、財産分与でも特に争点になりやすい財産です。
不動産は現物を分けることが難しいため、「売却して代金を分ける」「どちらかが取得して他方に代償金を支払う」方法が一般的です。
住宅ローンが残っている場合、その負債も考慮して清算する必要があります。
ただし結婚前に取得した不動産や、相続で受け継いだ実家の土地などは、原則として財産分与の対象外です。
投資によって得た株式や投資信託も共有財産に含まれます。
預貯金と同様、名義に関係なく財産分与の対象になります。
離婚時点でまだ受け取っていなくても、退職金は給与の延長として考えられ、財産分与の対象となる場合があります。
ただし「離婚が近い将来で支給が確実」なのが条件です。
車、家財道具、貴金属、ブランド品なども財産分与の対象に含まれます。
宝石や高級品は特にトラブルになりやすく、鑑定が必要になることもあります。
一方で日常生活で消費される食料品や衣服は対象外とされるケースがほとんどです。
財産分与は、あくまでも婚姻中に夫婦が協力して形成した共有財産を分け合う制度です。
一方で、夫婦の一方が個人的に得た財産や結婚前から持っていた財産などは「特有財産」とされ、財産分与の対象から外されます。
具体的には、以下のような財産です。
それぞれ解説します。
前述のように、結婚前にすでに所有していた預貯金や不動産、株式などは特有財産とされ、分与の対象にはなりません。
たとえば、独身時代に貯めていた預金やマイホーム、車などは相手と共有したものではないため対象外です。
婚姻期間中であっても、両親から相続した財産や贈与によって得た資産は原則としてそのひとだけの財産です。
親から相続した土地や家、預金、株式などが該当します。
衣服、バッグ、日用品など、日常生活に不可欠で消費的な性質を持つ財産は対象外とされます。
ただし高級ブランドバッグや宝石など、明らかに資産価値のあるものは対象となり得るため、注意が必要です。
財産分与の基本的なルールは、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産を分け合うことです。
しかし例外的に夫婦間で合意をして、あらかじめ財産分与の対象から除外することも可能です。
たとえば夫婦それぞれの独自の事業収益や、相手に承継させたくない財産について、合意の上で「対象外」と定められます。
離婚に伴う財産分与は、夫婦が築いた財産をどのように整理し、公平に分けるかを決める重要な過程です。
対象になるのは預貯金や不動産といったわかりやすいものだけでなく、株式や退職金、車や家財などさまざまです。
将来のトラブルを防ぐためにも、自分たちの財産がどの区分に当たるのかをあらかじめ把握しましょう。
必要に応じて、弁護士などの専門家に相談することも検討してください。
離婚は夫婦関係の清算であると同時に、生活基盤の再スタートでもあります。
しかし財産分与や養育費、子どもの親権、年金分割といった取り決めを曖昧にしたまま離婚すると、後になって思わぬトラブルへ発展する可能性があります。
離婚後の生活を安定させるためには、事前に注意点を理解し、必要な取り決めを文書化するのが重要です。
今回は、離婚後にトラブルを避けるために押さえるべきポイントを整理します。
離婚は夫婦関係の清算ですが、離婚届を出しただけで問題がすべて解決するわけではありません。
金銭面や子どもの養育、生活環境の変化などに関して、新しいトラブルが生じるケースもよくあります。
具体的には、以下のとおりです。
それぞれ確認していきましょう。
未成年の子どもがいる場合、親権者でない側が養育費を支払わなければなりません。
しかし離婚後しばらくは支払われても、数年経つと滞納が増えるケースがよく見られます。
背景としては、「養育費の金額や支払期間を口約束のままにした」「相手の居場所や連絡先がわからなくなった」などが挙げられます。
親権を持たない親にも、子どもと会う権利が認められていますが、これを巡ってトラブルになることがあります。
背景としては、「面会の回数や方法を取り決めていない」「面会の際に子どもへの悪影響があると感じる」などが挙げられます。
面会交流の日時・方法・場所を具体的に合意書に残すのが重要です。
財産分与についても、離婚時に十分な話し合いがされていないと後々問題になります。
片方が財産を隠していたことが発覚したり、退職金や保険金など将来的に得られる財産が分与対象かどうかで争いに発展したりと、さまざまなパターンがあります。
見落とされがちなのが年金分割の手続きです。
本来であれば、婚姻期間中に納付された額に対応する厚生年金を分け合えるのですが、離婚から2年以内に請求しなければ権利を失ってしまいます。
制度を知らずに放置してしまったり、相手が資料を出さないために手続きができなかったりといったケースも少なくありません。
離婚後も住宅ローンが残っている場合、どちらが支払いを続けるかをめぐってトラブルになることがあります。
家を売却せずにどちらかが住み続ける場合、ローンの負担をどう分けるかが曖昧になりやすく、連帯保証人としての責任が残ることで揉めるケースもあります。
慰謝料の未払いもよく見られる問題です。
離婚原因を作った側が分割で支払う約束をしても、途中で滞ることは珍しくありません。
自己破産や失踪によって事実上回収できなくなるケースもあります。
離婚は、単に夫婦の関係を解消する手続きです。
その後の生活や子育てを安定させるためには、多くのことを事前に取り決めておく必要があります。
最も大切なのは、口約束だけで済ませないことです。
養育費や慰謝料、財産分与など金銭に関わる約束をしたとしても、書面がなければ強制力がありません。
離婚時の合意は「離婚協議書」として残すのが基本であり、可能であれば公正証書にしておくことで、万が一の未払いにも法的に対応できるようになります。
次に、子どもに関する取り決めを具体的に定めることが重要です。
養育費の金額や支払方法、支払いがいつまで続くのかを明確にするだけでなく、面会交流の回数や方法についても細かく取り決めてください。
曖昧なままでは、相手の都合によって一方的に中止されたり、逆に強引に要求されたりする原因となります。
財産分与や年金分割の権利を確実に行使することも欠かせません。
婚姻中に築いた財産は名義にかかわらず分与の対象となりますが、相手が財産を隠すケースもあります。
離婚前に調査し、分与方法を合意書に盛り込んでください。
財産分与や厚生年金の分割請求には「離婚から2年以内」という期限があるため、忘れずに手続きを進めましょう。
合意内容が一方にとって極端に不利にならないよう配慮することも大切です。
婚前契約や夫婦間での取り決めは有効ですが、公序良俗に反するような不合理な条件は無効となる場合があります。
公平性を意識し、必要であれば専門家のアドバイスを受けながら合意内容を整えてください。
離婚は、婚姻関係の清算にとどまらず、その後の生活や子どもの将来に大きな影響を与えます。
その場しのぎの口約束ではなく、合意を具体的に文書化し、将来に備えましょう。
とはいえ、実際に何をどう取り決めるべきか、どのように合意書を作成すれば法的に有効かを判断するのは簡単ではありません。
離婚後の不安やトラブルをできるだけ減らし、安心して新しい生活を始めるために、弁護士に相談してみることをおすすめします。