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過失相殺とは? 交通事故被害者に過失があるときの賠償額と計算方法

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警察庁交通局の公表するデータによると、年々交通事故による死者や重症者の数は減少傾向にあります。ただ、それでも1年間の死者数は2,500人を超え、重傷者も2万5,000人を超えており、毎日のように大きな事故が発生しています。

大きな事故が発生するとその分請求する損害賠償額も大きくなるのですが、被害者側に過失が認められる事故もあり、そうすると過失の程度に応じて請求できる金額は少なくなります。この「過失相殺」は交通事故の被害者にも加害者にも重大な問題ですので、過失があるときの減額割合、計算方法について理解しておきましょう。

 

過失と過失相殺について

過失相殺は、過失の存在を前提としています。

そして「過失」とは「不注意」「ミス」「落ち度」を意味する言葉で、例えば左右をよく見ずに道路を横断した場合や、赤信号を無視して道路を横断した場合には歩行者に過失があったと評価できます。

そして交通事故によって損害が発生したときは被害者が加害者に対して損害賠償請求を行うことになりますが、被害者側にも過失があるにもかかわらず全額を相手方に請求するのは妥当といえません。
そこで被害者の過失分を、加害者が負担する賠償金から差し引くことでバランスを取るのです。この処理を「過失相殺」と呼んでいます。

 

交通事故における過失相殺の要素

交通事故で過失相殺が行われる場合、次の要素が考慮されます。

  • 道路交通法に定められた優先関係
    (優先道路ではない道を走行していた当事者に大きな過失が認められやすい。)
  • 当事者の状態
    (歩行していたのか、自転車に乗っていたのか、車に乗っていたのかなど。)
  • 周囲の環境
    (時間帯や明るさ、交通量など。)
  • 事故発生の予見可能性や回避ができたかどうか など

なお、過失相殺は裁判所で認定してもらうことができますが、一般的な流れとしてはまず示談交渉により過失の割合を定めることになります。そして示談交渉においては裁判所や警察など公的な機関が過失相殺について認定を行うことはなく、当事者間で話し合って折り合いをつける必要があります。

「自分たちで事故状況を整理して過失の程度を考えないといけない」といえますが、誰かに一方的に決められることはないことから、「相手方の主張する過失割合に従う必要はない」とも言い換えられます。
そこで、相手方の保険会社から示談金の提示を受けることもありますが、その金額や過失相殺の内容に納得がいかないときは同意しないことも可能です。納得いかないまま示談書にサインをすることのないよう注意してください。

 

事例別:過失相殺の割合と賠償額の計算

過失相殺については交通事故の状況を個別に評価していく必要がありますので、一概に「〇〇のときは〇〇%の過失相殺」と断定することはできません。ただ、過失相殺の判定にもおおよその相場がありますので、過去の事例を参照することでだいたいのイメージを掴むことは可能です。

以下でいくつか交通事故の事例を取り上げて、過失相殺の割合や賠償額の計算について説明していきます。

歩行者が夜間に道路を横断した

歩行者と車の接触事故では、双方にこれといった過失がない場合でも車に大きな過失が認められる傾向にあります。

例えば夜間に車道を横断する歩行者が車と接触したとしましょう。このとき歩行者に大きな過失が認められそうにも思えますが、他に特筆すべき事情がなければ歩行者側に50%を超える大きな過失が認められることはなかなかありません。

車の運転者に「道路を横断する人はいないと軽信した」として大きな過失が認められることも多く、同様の状況で歩行者20%・運転者80%とする過失相殺を認めた事例があります。

仮に損害額が1,000万円とすれば、過失相殺により20%相当の200万円が差し引かれて、歩行者が請求できる賠償金は800万円となります。

請求額 = 損害額×(1-過失割合)

    = 1,000万円×(1-0.2)

    = 800万円

歩行者が信号無視をした

基本的には車の運転者に大きな過失割合がつく傾向にありますが、歩行者が赤信号を無視して横断し、その結果車と接触したのであれば歩行者側に割合大きな過失が認められやすいです。

歩行者に70%の過失が認められることもあり、例えば損害額500万円であれば、過失相殺によって請求できる金額は150万円にまで減額されます。

請求額 = 損害額×(1-過失割合)

    = 500万円×(1-0.7)

    = 150万円

高齢者が車道を歩行した

過失相殺を考えるとき、歩行者の行為だけでなく、歩行者の年齢などさまざまな事情が考慮されます。

過去には、車道に0.5mほど入って歩いていた歩行者と車が接触してしまった事案で、車側に「わき見をして前方不注意があった」との過失が認められ、歩行者が81歳と高齢であったことも関係して過失相殺をすべきではないと結論付けられた事例があります。

この場合の被害者は発生した損害額をまるまる相手方に請求できることになります。

自転車が横断禁止の道路を横断した

自転車対車の事故でも、車の方に重い過失が認められやすいです。例えば歩行者横断禁止の幹線道路をライト不点灯の自転車が横断し、車と接触した事故でも、双方に50%ずつの過失が認められた例があります。

この場合、2,000万円の損害額があるなら過失相殺によって請求額は1,000万円となります。

請求額 = 損害額×(1-過失割合)

    = 2,000万円×(1-0.5)

    = 1,000万円

自転車が一時停止を無視した

交差点において、一時停止を無視して進行してきた自転車と、一時停止のない道路から走行してきた車が出合い頭事故を起こした事案で、自転車側に40%の過失相殺を認めた例があります。

車同士であれば一時停止を無視した当事者に50%を超える過失が認められると考えられますが、当事者の状態によってこれだけ過失の程度が変わってくるのです。

このとき自転車側に1,500万円の損害が発生しているとすれば、請求額は900万円となります。

請求額 = 損害額×(1-過失割合)

    = 1,500万円×(1-0.4)

    = 900万円

なお、実際の請求額を計算する場面ではより細かい事情も考慮していく必要があります。事故の相手方に生じた損害なども最終的な請求額に関わってきますし、過失相殺の計算や請求の手続に困ったときは早めに弁護士に相談するようにしましょう。