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調停離婚とは?手続の流れや有利に進めるポイントを解説

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離婚をする方法はいくつかあります。夫婦間で話し合って離婚することを決めるのが基本形ですが、それが難しいときは「調停」の手続により離婚の話を進めていくことになります。

前者の場合を協議離婚、後者の場合を調停離婚と呼び、それぞれ手続の方法やポイントが異なります。当記事では調停離婚に着目して解説をしていきます。

 

調停離婚とは

結婚をするときと同様に、離婚に関しても夫婦間で話し合って決断することができます。実際、ほとんどの離婚事例はこの「協議離婚」により行われています。

しかし離婚をするかどうかについて意見が揃わないこともあります。また、離婚をすることについて方針が一致していても、離婚に際しての財産分与や親権、養育費、慰謝料のことで意見が揃わないこともあります。

夫婦間の話し合いだけでは解決ができない、そもそも話し合い自体ができない、といったときは協議離婚を成立させられず「調停離婚」を目指すこととなります。

「調停」とは、裁判所に申し立てを行い、専門家に意見を聞いてもらって、円滑・穏便な解決を図る手続です。この調停による離婚が「調停離婚」です。離婚をするかどうかだけでなく、親権のことなども幅広く調停で話し合うことが可能です。

なお、調停は訴訟とは異なりますので、裁判官に強制的に結論を出してもらうことはできません。最終的には相手方の同意を得て調停成立に至らなければ離婚はできません。

調停離婚は毎年2万件弱利用されている

調停の手続は一般にあまり聞き馴染みがないかもしれませんが、離婚に関する調停だけでも毎年2万件近く利用されています。離婚件数全体が20万件弱ですので、おおよそ10%が調停離婚によるものだとわかります。

司法統計でも詳細なデータが公表されています(出典「令和4年 司法統計年報 3家事編」)。このデータによると、離婚に関する調停の申し立ては全件で「18,333件」です。そのうち夫側からの申し立ては「5,051件」であるのに対し、妻側からの申し立ては「13,282件」と倍以上の差が確認できます。

また、結婚期間別に見てみると、1~5年までの申し立て件数が比較的多く、25年以上の結婚期間を持つ夫婦間でも年に「2,594件」の離婚調停の申し立てが行われていることがわかります。

 

調停離婚の手続

調停離婚をするには裁判所に申し立てをしなければなりませんし、調停期日にはご自身も参加して主張内容を伝える必要があります。どうすれば調停を進められるのか、手続について簡単に紹介します。

申立ての準備

思い立った日にいきなり調停を始められるものではありません。まずは準備が必要です。

1つは費用です。申立手数料である収入印紙代1,200円と、連絡用の郵便切手代を用意します。郵便切手代については一律ではないため、別途確認が必要です。

次に書類の準備です。次の書類について控えを取った上で、裁判所に提出できるようにしておきましょう。

  • 申立書
    配偶者にも送ることになるため、裁判所への提出分と配偶者用の写しも1通用意する。配偶者からDVを受けている場合には住所等を知らせるべきではなく、その場合は申立書に記載しない。
  • 事情説明書
    未成年の子どもがいるときに作成が必要。
  • 連絡先等の届出書

  • 進行に関する照会回答書
    手続の進行に関わるアンケートのこと。DVを受けていた場合には裁判所で鉢合わせないよう配慮を求める必要があり、その旨などを記載する。
  • 戸籍謄本
    3ヶ月以内に発行された、夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)を準備する。

なお、申立先は「配偶者の住所地を管轄とする家庭裁判所」です。ご自身の自宅近くの裁判所ではありません。また、地方裁判所ではなく家庭裁判所であることにも留意しましょう。
※配偶者と調停を実施する家庭裁判所についての合意があるときは、その家庭裁判所でも可能。

調停開始後の流れ

調停の流れは次の通りです。

  1. 申し立て
  2. 期日の連絡を受ける
  3. 調停期日を必要に応じて複数回実施
  4. 調停の成立・不成立

調停当日は、配偶者と対面で話し合うのではなく、独立した待合室で待機し、交互に調停室で意見を伝えていくことになります(同時に行うこともある)。中立の立場にある調停委員が各々の意見を聞きつつ、話を進めていきます。1回あたりの時間は2時間程度となることが多いです。

調停の場では、自らの主張内容が正しいと調停委員に伝えることが大事で、そのためには裏付けとなる資料を用意しておくことが望ましいです。例えば「収入が証明できる資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書など)」や「夫婦の財産が証明できる資料(不動産登記事項証明書、預金通帳の写しなど)」です。

調停が成立した後の流れ

調停が成立してもその後必要な手続があります。

まずは「離婚の届出」です。
戸籍に離婚の情報を載せるため、成立の日から10日以内に市区町村役場で届出を行います。その際、離婚や親権者の記載がある調停調書謄本も持って行きましょう。

また、婚姻中の氏(名字)を継続して使うときは別途手続が必要です。離婚をすると婚姻前の氏に戻ることとなるため、維持するなら離婚の日(調停成立の日)から3ヶ月以内に、市区町村役場にてその旨の届出を行わなければなりません。

さらに、調停で話し合って決めたにもかかわらず養育費や慰謝料の支払いなどを行わない配偶者に対しては履行勧告の手続も検討します。裁判所に申し出て、支払うよう勧告してもらうのです。

 

離婚調停の手続に関する法改正について

2022年には改正民事訴訟法が交付されました。その改正内容には離婚問題に関わるものもあります。

例えば「DV被害者などが訴えの提起をするとき、一定の場合に住所等を隠すことができるとする制度の創設」が改正内容の1つにあります。

他にも、民事訴訟のデジタル化を進める各種改正があるのですが、「離婚調停に関してもWeb会議システムを使うことが可能になる」ことが予定されています。このルールが運用され始めるのは改正法公布から3年以内とされていますので、令和6年(2024年)度中には開始される見込みです。
無理に裁判所に出頭する必要はなくなり、対面による危険が伴うときでも安心して調停に臨むことができるようになるでしょう。

 

離婚調停で押さえておくべきポイント

離婚調停を進める際、いくつかポイントを押さえて取り組むべきです。ご自身の意見が通るよう、有利に調停を進められるよう、事前に備えておきましょう。

主張内容を調停委員にしっかりと伝える

夫婦間で顔を突き合わせて話していると感情的になってしまうこともあるでしょう。しかし調停では調停委員に対して言いたいことを伝えれば良いのです。焦る必要はなく、落ち着いて主張内容を伝えることが大事です。

不安があるという場合はあらかじめ主張内容を文書にまとめておくと良いです。伝えるべきことに漏れがないよう書き記しておきましょう。

証拠を確保しておく

言いたいことを伝えるだけでは問題は解決しません。法的に、客観的に自分自身の言い分が正しいことを認めてもらうことが大事です。

そこで証拠の確保が必要です。あらゆる事柄に証拠が必要なわけではなく、立証の必要があることに関して証拠を準備します。例えば不倫が理由で離婚をするとき、不貞行為の写真などを確保しておくことができればご自身の言い分が認められやすいです。慰謝料の請求をするためにも効果的です。

主張内容に対してどのような証拠が必要なのか、どうやって証拠を集めるのか、詳細は弁護士に相談してアドバイスを得ておくと良いです。

相場を知っておく

相手方に非があることが明らかであったとしても、何でもご自身の言いなりにさせられるわけではありません。極端に高額な慰謝料や養育費の請求は訴訟に進んだとしても認められないですし、親権や面会交流に関しては「子どもの利益」を第一に考えて決めるものです。

不倫をした相手方に問題があるとしても、当然に親権が獲得できるわけではなく、一切の面会交流を否定できることにもなりません。

そこで金額など、程度の問題について上手く交渉を進めていくには、相場への理解が重要です。過去の事例と照らし合わせて現実的に認められる余地があるのかどうか、この点を考えながら自らの意見を主張していくようにしましょう。判断が難しいなら弁護士への相談をおすすめします。