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法定後見制度利用の流れ|手順や知っておくべき注意点について解説

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ご家族の方画がすでに判断能力が低下しており、生活に不安を感じている場合は、その本人を法的に保護する「法定後見制度」の利用を検討してみましょう。

制度の利用にあたって知っておきたい基本知識をここにまとめましたので、利用手順や注意点をぜひチェックしてください。

 

法定後見制度の流れ

法定後見制度は次のような流れで進行します。

  1. 申立ての準備
  2. 家庭裁判所への申立て
  3. 家庭裁判所による審理・審判
  4. 審判内容の登記(後見登記)
  5. 後見人による業務開始
  6. 終了

STEP1:申立ての準備

法定後見制度を利用するために、まずは申立てに向けての準備を始めます。

この準備段階でもっとも重要なのは「必要書類の収集」です。
具体的には、戸籍謄本・住民票・診断書・財産目録などが含まれます。特に診断書については専用様式を使用する必要がありますので、家庭裁判所の窓口やWebサイトから入手しておきましょう。
また、「申立書の作成」も当然欠かせません。

なお、これらの準備は基本的に申立人が行うことになりますが、必要に応じて専門家や関係機関に相談することも可能です。

STEP2:家庭裁判所への申立て

準備が整ったら、正式に申立てを行いましょう。

申立ては、申立書と各種添付書類を家庭裁判所に提出することで行います。この際、手数料として収入印紙が必要であり、また登記手数料も別途必要となります。

なお、申立書類は家庭裁判所へ直接持参するほか、郵送する方法もあります。提出する前にコピーを取っておくと面接の際にも役立つでしょう。

STEP3:家庭裁判所による審理・審判

家庭裁判所は、提出された申立書と関連書類をもとに審理を開始します。

審理では、申立人や本人、後見人候補者への面談調査が行われますし、親族への意向照会も実施されることもあります。
こうして本人の判断能力や自立して生活する能力について詳細な確認が行われるのです。そしてこの過程では、専門医による医学鑑定が必要になる場合もあります。診断書を提出していても鑑定が求められるケースもあり、その場合は別途鑑定費用の負担が発生することは覚えておきましょう。

そして、審理の結果を踏まえて、家庭裁判所は後見開始(または保佐開始、補助開始)の審判を行い、成年後見人(または保佐人、補助人)を選任します。
この審判結果は申立人と成年後見人に通知され、この通知から2週間以内に不服申し立てがなければ審判が確定となります。

STEP4:審判内容の登記(後見登記)

後見等の開始については登記を行う必要があります。とはいえ会社のする商業登記や土地や家などに関する不動産登記とは異なり、申立人などが直接手続きを行う必要はありません。

審判の確定後、家庭裁判所が法務局に対して審判内容の登記を依頼してくれるからです。

登記が完了すると後見・保佐・補助の制度を利用していることが公的に証明できるようになります。

STEP5:後見人による業務開始

後見人等は、登記が完了すると業務を開始します。

初めは家庭裁判所から職務についての説明を受けることがありますので、親族が後見人等として選任された場合にはご留意ください。法律に基づく厳格な制度ですので、きちんと職責を果たすように努めないといけません。

具体的には次のような業務です。

  • 不動産や預貯金の管理
  • 生活費の支払い
  • 医療や福祉サービスの契約
  • 本人の生活環境や健康状態を維持・改善するために必要な措置・契約 など

また、業務開始後は本人の財産目録と年間収支予定表を作成し、家庭裁判所に対し報告を行わなければいけません。報告は通常年1回行われ、財産状況や収支計算書、本人の生活状況などを伝える必要があります。
この報告を通じて家庭裁判所は後見人等の業務遂行状況をチェックし、不適切な行為の防止を目指しているのです。

STEP6:終了

法定後見制度は、本人の死亡や判断能力の回復によって終了します。

終了時には家庭裁判所への連絡が必要であり、本人が死亡した場合には相続手続きも関わってくるため、後見人等は相続人への財産引継ぎの事務に対処する必要があるでしょう。
また、終了時点で未処理の事務についても整理し、その結果を家庭裁判所へ最終報告することになります。

 

法定後見制度の注意点

法定後見制度を利用するにあたって、以下の注意点を理解しておくことが重要です。

家族が後見人になれるとは限らない

法定後見人は家庭裁判所によって選任されます。申立人が希望する人物が必ず選ばれるわけではなく、裁判所が適切と判断した人物が選ばれますので、「家族にサポートして欲しい」と思っていても希望どおりになるとは限りません。

親族間でトラブルが起こり得る

後見人等は被後見人の財産を厳格に管理しなければならず、自分の財産以上に慎重な態度で管理することが求められます。そして、この制度は本人のために利用するものという前提を忘れてはいけません。決して家族のための制度ではないため、支援対象である本人の利益にならない行為(例えば生前贈与など。)は原則として認められません。

また、不正行為が発生すると親族間で揉めることもあります。悪意をもって不正行為をしようとしていなくても、客観的にみて財産の私的流用と評価されるような行為、利益相反となるような行為は避けなくてはなりません。

費用がかかる

法定後見制度の利用にあたっては費用が発生します。

申立手数料や診断書を取得するための費用などもありますが、これらは通常大きな問題にはなりません。比較的金額が大きなものとしては鑑定費用(求められた場合のみ発生。)や弁護士などの専門家への依頼料(利用する場合のみ発生。)、そして後見人等に対する報酬(報酬の支払いを設定した場合のみ発生。)が挙げられます。

弁護士費用や後見人等に対する報酬は必須ではないものの、より安全に法定後見制度を利用し、より適切な業務を期待するのであればその支出についても前向きに検討しましょう。

専門家を活用することで手続きの不備も発生しにくくなりますし、トラブルも起こりにくくなります。後見人等に対する報酬についても継続的な負担が発生しますが、無償の場合に比べて責任ある行動が期待できるようになります。

途中で自由にやめられない

法定後見制度をいったん利用し始めると、途中で自由にやめることはできません。この点も覚えておきましょう。

加齢や認知症により判断能力が低下している場合、判断能力が回復して制度の利用が終了するケースはなかなか考えにくいため、一般的には支援対象の本人が亡くなるまで続きます。

そのため申立てをする前にしっかりと吟味し、専門家を交えて親族間でもよく話し合っておきましょう。