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損害賠償と慰謝料の違い|損害の内容や賠償金の算定方法などの比較

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交通事故や離婚、その他事件・事故があったときには「慰謝料を払ってください」などと主張することがあります。一方で、「損害賠償をしてください」と表現することもあります。

実はこの慰謝料と損害賠償、まったくの別物ではありません。ここでそれぞれの言葉が意味することを説明し、両者の違いに言及していきます。

 

損害賠償とは

「損害賠償」とは、ある行為から生じた損害を補償することを意味します。

さまざまな損害に対する補償を含む、広い概念といえます。損害賠償は大きく①財産的損害と②精神的損害に分けることができ、②については一般に「慰謝料」と呼ばれています。

さらに、①に関しては「積極損害」と「消極損害」に分けることができ、交通事故における損害を例に挙げると次のように分類できます。

財産的損害の種類

交通事故における主な例

積極損害
(不法行為により減少した財産分)
治療費
交通費
車両修理費
弁護士費用
消極損害
(不法行為がなければ得られたはずの利益分)
休業損害
逸失利益

 

慰謝料とは

上述の通り、慰謝料とは損害賠償の1種です。
損害賠償金のうち精神的損害を補償する部分を特に指して慰謝料と呼んでいるのです。

交通事故などの不法行為が原因で、不安、悲しみ、苦しみといった精神的苦痛を負うことがあります。この損害について算定を行い、慰謝料として金銭を支払うことでその損害の補償を図るのです。

精神的苦痛への補償

慰謝料は、「精神的苦痛」を負ったことに対する賠償として支払われるものです。

精神的な苦痛は様々な要因で引き起こされます。

例えば怪我を負わされることによっても精神的苦痛は生じます。身体に痛みが生じますし、治療・入院・手術を行わなければならないとすれば、日常生活から生じる喜びや楽しみが侵害されてしまいます。
後遺症が残ったときにも大きなショックを受けることとなり、その影響を長く受け続けることになります。

また、物損から精神的苦痛が生まれることもあります。代替できる物ではなく、特に愛着を持っていた場合などには、限定的ではあるものの物損を原因に慰謝料請求が認められる余地もあります。

 

損害賠償と慰謝料の違い

損害賠償金の1種が慰謝料ですので、両者は完全に別個の概念ということではありません。

違いを挙げるとすれば、「損害の内容」や「損害額の算定方法」に差があるといえるでしょう。

慰謝料は精神的苦痛を賠償するための金銭であるのに対し、損害賠償金はその他の財産的損害への賠償も広く含む金銭です。

また、治療費や修理費、そして休業損害などは損害額の算定が比較的簡単です。実際に支出することとなる費用、減ってしまった給料などを足し合わせれば全体の損害額が明らかになります。

一方の慰謝料は、目に見える損害ではありません。被害者側の主観に大きく依存し、その程度を外部に伝えることも難しいです。また、同じ被害が発生したとしても感じ方は人によって異なります。後遺症が残ったときに感じるショックの大きさ、痛みの感じ方なども人それぞれです。

そこで、慰謝料の金額についてはある程度画一的な取り扱いがなされています。例えば後遺症の程度を表す指標として後遺障害等級が使われることがあります。このときは等級に応じて慰謝料の相場もある程度定まります。
離婚に際しての慰謝料も、本来人によって感じ方は異なるところ、同様のシチュエーションにおける相場を基準に算定が行われています。

被害の種類で区別されることが多い

「損害賠償」は慰謝料も含む広い言葉なのですが、一般的には被害の種類で区別されていることが多いです。

財産への被害があったときには「損害賠償」。精神面への被害があったときには「慰謝料」と使い分けられていることがあります。
ただ、本質的には別個独立の概念ではないということを知っておくと良いです。