交通事故に遭った後、治療を続けていても、ある時点で「これ以上はよくならない」と医師が判断する場合があります。
このような状態を「症状固定」と呼びますが、一般の方にはなじみのない言葉かもしれません。
今回は、交通事故における症状固定の意味やタイミング、影響を解説します。
交通事故の被害者がケガをして治療を受け、一定期間が過ぎると医師が「今後は大きな回復は見込めない」と判断する場合があります。
この判断が下された時点が「症状固定」です。
症状固定は、「治療の終了」とは意味が異なります。
完治はしていなくても、これ以上治療を続けても回復が見込めないとされる状態が症状固定です。
症状が残っている場合でも、「後遺症」として扱われる転換点となります。
症状固定の判断をするのは、治療を担当している医師です。
医学的な根拠にもとづいて、「これ以上の改善は見込めない」と判断されれば、症状固定となります。
医師の判断だけでなく、被害者本人の感じ方や生活への影響が重視されるケースもあります。
もし保険会社が一方的に症状固定を主張してきた場合でも、それに従う必要はありません。
医師の意見や、場合によっては複数の医師のセカンドオピニオンを求めるのも重要です。
症状固定の時期はそれぞれ異なりますが、事故からおおよそ6か月から1年が目安です。
ただし傷の程度や回復のスピードによって、症状固定のタイミングは異なります。
打撲は、交通事故のけがの中でも比較的軽いものとされます。
軽度のものであれば、数日から数週間で自然に回復するケースがほとんどです。
しかし部位や程度によっては、痛みが長く続いたり、神経を圧迫してしびれが残ることもあります。
その場合は、経過をみながら、1か月から3か月程度の治療を行います。
完治し、病状固定に至らない場合も珍しくありません。
むち打ちの場合は、症状が表に出にくく、客観的に証明するのが難しいのが特徴です。
6か月から1年ほどで症状固定とされるのが一般的です。
骨折の場合は、骨が癒合するまでの期間や、その後のリハビリの進み具合によって異なります。
通常、3か月から半年程度で骨がつくとされ、その後の経過をみて6か月から1年ほどで症状固定と判断されるケースが一般的です。
醜状障害とは、顔や体に目立つ傷などが残ることです。
やけどや切り傷、手術痕などが原因で、見た目に明らかな変化がある場合が該当します。
症状固定の目安としては、6か月から1年程度です。
高次脳機能障害とは、事故などによって脳に損傷を受けた結果、記憶力・集中力・判断力などに問題が生じる障害です。
外見上は異常がなくても、言葉が上手く出ない、感情のコントロールが難しいなどの症状がみられます。
症状固定の時期は、慎重に見極める必要があり、一般的に1年以上の観察・リハビリを経て判断されます。
症状固定と診断されると、残った症状は、後遺障害として扱われます。
保険会社に対しては、後遺障害等級の認定の申請が可能です。
申請によって、後遺障害慰謝料や逸失利益といった補償を受け取るかどうかが決まります。
後遺障害慰謝料とは、交通事故によって被害者に残ってしまった後遺症(後遺障害)に対して支払われるものです。慰謝料は、後遺障害の等級によって金額が大きく異なります。
自賠責保険の基準に基づいて1級から14級まで定められており、1級が最も重く、14級が最も軽度な後遺障害とされます。
逸失利益とは、交通事故による後遺障害のために、将来にわたって得られなくなった収入(利益)に対する補償です。
具体的には、後遺障害がなければ将来得られたであろう収入から、後遺障害によって減少した収入分を差し引いた金額を指します。
保険会社が示談を急ぐ理由は、治療費の支払いを早く終わらせたいという思惑です。
そのため、まだ治療の効果がある段階で症状固定を勧められることもあります。
しかし早く症状固定と診断されると、本来得られるはずの補償が少なくなるリスクがあります。
無理に示談せず、必要であれば弁護士や医師に相談しながら慎重に判断すべきです。
交通事故によって後遺障害等級の認定を受けた後、症状固定とされたにもかかわらず、しばらくしてから症状が悪化するケースがあります。
交通事故との関連が疑われる場合は、医師の再診を受けるのが大切です。
症状の変化が事故によるものなのか、それとも別の要因によるものなのかは重要なポイントです。
たとえば、持病の悪化や症状固定後の新たなケガが原因とされれば、交通事故との因果関係が認められない可能性もあります。
症状固定を判断する前に、経過観察の期間を十分に取る必要があります。
症状固定が一度下された後に治療を再開した場合、保険会社がその後の治療費を支払うことはまれです。
「症状固定後に治療を再開するということは、当初の判断が間違っていたことになる」として、支払いを拒否されるケースが多く見られます。
症状固定後に状態が悪化した場合は、医学的な根拠をそろえ、事故との因果関係を明確にするのが重要です。
今回は、交通事故における症状固定について解説しました。
安易に保険会社の指示に従うと、本来受け取れる補償を逃す可能性もあります。
症状固定の判断が近づき、本格的に示談交渉を進める段階になったら、弁護士などの専門家への相談を検討してください。