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成年後見人とは?後見人になれる人となれない人を紹介

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安心安全の生活を送るためには、「判断能力」が必要です。認知症や知的障害、精神障害などが原因で判断能力が低下することもあり、この場合、適切に財産を管理したり介護サービスを利用するための契約を交わすことができなかったりします。
そこでこのような方を保護する制度に成年後見制度があります。成年後見制度では成年後見人等が選任され、選任された人物がその後継続的に本人を支えていくこととなります。

成年後見人等は重大な役割を担うため、誰を選任しても良いということにはなりません。そこで当記事では最初に後見人について説明した後、「後見人になれる人・後見人になれない人とはどんな人なのか」を解説していきます。

 

成年後見人とは

成年後見人とは、成年後見制度において本人を支援する、後見を担う立場の人物です。本人の代わりに法律行為を行う、あるいは本人のした行為を取り消したり本人のする行為に同意を付したりして、法的なサポートを行うのです。

ただ、成年後見制度にもタイプが分かれており、後見を担う人物にも種類があります。

後見人の種類

後見人の種類として「成年後見人」のほか、「保佐人」や「補助人」、そして「任意後見人」が挙げられます。

  • 成年後見人
    法定後見制度において、“本人が判断能力を欠いている”ときに選任される後見人。
    本人の財産に関するすべての法律行為を代理で行うことができる。
  • 保佐人
    法定後見制度において、“本人の判断能力が著しく不十分”なときに選任される後見人。
    保佐人には、民法第13条第1項に規定されている重大な行為については同意権が付され、さらに申立をすることで限定的に代理権を与えることもできる。ただし代理権についての審判をするためには本人の同意が必要。
  • 補助人
    法定後見制度において、“本人の判断能力が不十分”なときに選任される後見人。
    判断能力の低下具合がもっとも軽度な場合に選任され、申立時に指定した特定の行為についてのみ同意権が付される。補助開始の申立自体にも本人の同意が必要。
  • 任意後見人
    任意後見制度において、本人が事前に任意後見契約を締結することで選任される後見人。
    後見人としての仕事内容は当事者間であらかじめ定めることができる。また法定後見制度と異なり、本人が後見人となる人物を選ぶことができる。

それぞれ選任するための手続や要件が異なりますし、各々に与えられる権限についても大きく異なっています。

 

後見人になれる人

法令上、「後見人になれる人」などと限定的に要件が列挙されているわけではありません。特別な資格は求められておらず、幅広い人物が後見人になることができます。

法人が後見人になることもできますし、複数人が後見人になることも認められています。

 

後見人になれない人

後見人になれるかどうかに関しては、“なれない人”を把握した方が手っ取り早いです。どのような場合に後見人になれないのか、以下の内容から整理しておきましょう。

法定の事由に該当する人

民法には、「後見人の欠格事由」として条文が設けられ、そこに特定の人物が列挙されています。その内容をまとめたものが下表です。

民法の規定上、後見人になれない人
未成年者

後見人の仕事には「身上監護」や「財産管理」が含まれる。そこで後見人には完全な行為能力が必要で、これが備わっていない未成年者は後見人としてふさわしくない。
そもそも未成年者自体が法的に保護対象とされている。
※令和4年4月1日施行の改正民法で成人年齢は20歳から18歳に引き下げられたため、18歳や19歳でも後見人になることは可能になった。

家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人

過去に、本人との関係やその他の人物との関係において、“後見人から解任された”背景を持つ人物のこと。以前何らかの理由で後見人を解任されてしまっていると、それ以降後見人にはなれなくなる。

破産者

破産手続開始決定を受けて復権を未だしていない人物のこと。
「過去に自己破産の経験がある者」という意味ではない点に注意。自己破産の手続を経験していたとしても、すでに免責許可決定を受け、同決定が確定している人物に関しては、欠格事由に該当しない。

被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族

本人との間で民事訴訟があった人物が該当する。
強制執行や民事保全の手続を取った場合も該当すると考えられている。
訴訟の提起により対立当事者関係に立った場合、利害や感情面において敵対関係にあり、そのような人物を選任すべきではないとの考えに基づく。

行方の知れない者

当然、どこにいるのかもわからないような人物を後見人として選ぶことはできない。

 

未成年者以外、そうそう該当する事由ではありませんが、これらの事由に当てはまる方は後見人になれません。

さらに任意後見制度の場合は、任意後見受任者(任意後見人になる予定の人物のこと)に関して、「不正な行為や著しい不行跡、その他任意後見人の任務に適していない」と評価されるだけの事由があってはいけません。

このとき、任意後見制度の利用で必須とされる任意後見監督人を選任することができない、と任意後見契約法に規定されていますので、実質任意後見人における欠格事由といえるでしょう。

本人と利害関係がある人

後見人の選任に関して最終的な権限を持つのは家庭裁判所です。そして家庭裁判所は、後見人候補者に上記事由がないことはもちろん、その他さまざまな事情も判断材料とします。本人の心身の状態、生活状況、財産状況。そして後見人候補者の職業や経歴なども評価対象となり得ます。

特に重視されるのは「利害関係」です。

利害の対立が後見制度開始時点で顕在化してなくても、利害関係を持つ可能性があることを理由に、後見人になれなくなる可能性があるのです。

そこで例えば、本人に対して介護サービス等を提供している施設の職員やケアマネジャーなどが問題となります。これらの人物は本人のことをよく理解していますし、後見人として問題なく職務を遂行してくれるかもしれません。
しかしながら、これらの人物は本人が利用する介護サービスの会社などに所属しています。もし、本人が介護サービスを受ける中で怪我を負ってしまったとき、後見人が本人に代わり会社に損害賠償請求などを行うことになります。ただ、後見人が当該会社の従業員だと、本人のために適切な行動を起こしてくれない危険性が高まってしまいます。

そこで、成年後見制度とは別にサービス等の提供で本人をすでに支援している人物については、後見人に選ぶことはできません。

この点、親族間でも問題となることがあります。相続の場面で利害関係が対立するおそれがあるからです。例えば兄の後見人として弟がついたとしましょう。このとき両者の親が亡くなると、この兄弟を共同相続人とする相続が開始します。兄弟で遺産分割協議を行う必要がありますが、後見人と相続人の立場が重なってしまい問題が生じます。

なお、この場合は特別代理人の選任により解決することができますが、将来トラブルが起こらないように後見人は選任されなければなりません。

後見人になった後で外されることもある

後見人になってからも要注意です。いったん後見人になってしまえば良い、ということではなく、その後上に挙げた事由に該当することとなった場合、後見人ではなくなってしまいます。

そのため成年後見制度の利用を開始してから破産者になった場合や、支援対象である本人に対して訴訟を提起した場合、行方不明になった場合などには、後見人としての立場を剥奪されることがあります。

 

後見人の候補者

後見人の候補者として、まず「親族」が挙げられます。成年後見制度が開始された当初は親族後見人の割合が特に多く、本人のこともよく知っているためその意味では後見人としてふさわしいともいえます。しかし財産の管理や法律行為を適切に行うだけの知識が必要ですし、不正があってもいけません。そのような事情もあって、近年では第三者が選任される割合の方が高くなっています。

第三者後見人の多くは専門家です。弁護士や司法書士、社会福祉士、行政書士、税理士、精神保健福祉士などが候補として挙げられます。その中でも弁護士、司法書士、社会福祉士の選任率がとても高いです。

また、市民後見人も候補に挙がってきます。弁護士や司法書士、社会福祉士のような専門家が不足しているという状況があり、後見人の担い手を増やす目的で「市民後見人」は登場しました。専門家に比べると不安に思われるかもしれませんが、老人福祉法では市町村に対し、後見人の育成や活用を図るための措置を講ずる努力義務を課しており、自治体では実際に研修が実施される例もあります。そのため単なる一般市民が後見人になるわけではなく、後見人としての適性についてもある程度担保はされていると考えられるでしょう。

成年後見制度や後見人選任に関することなどは、自治体や専門家が窓口として受け付けていますので、まずは気軽に相談をしてみることをおすすめします。